「善をもって悪に勝ちなさい」
一之木幸男 牧師
ローマの信徒への手紙12章9~21節
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「善と悪」という、人間にとって最大のテーマがここで取り上げられています。この観点から『ローマの信徒への手紙』全体を通読し直してみると、パウロがいかに真実に、そして徹底して《神の御前で》人間の・自分自身の内に潜む悪というものを、透徹したまなざしで見つめることへと導かれていったのか、ひしひしと伝わってきます。◇3章で詩編を引用しています。「正しい者はいない。一人もいない。善を行う者はいない。ただの一人もいない。」その直後に、「ところが今や」と言って、その人間に対する神の働きかけ、限りない恵みを明らかにします。「人は皆、罪を犯して神の栄光を受けられなくなっていますが、ただイエス・キリストによる贖いの業を通して、神の恵みにより無償で義とされるのです」パウロは悪に対する自分の無力さをも告白しています。「誰が私を救ってくれるでしょうか」◇十字架は《罪人のための》キリストの死でした。《敵のための死》でした。この神の愛に偽りなく生きる道すじとして、「悪を憎み、善から離れず」と勧められているのです。 続けて語られていることに主イエス・キリストが透けて見えてきます。主は神と等しくあることに固執されなかった。「迫害する者のために祈れ。復讐してはならない」と教えられたとおりに、十字架上で祈られた。「父よ、彼らをお赦しください」◇「悪に負けることなく、善をもって悪に勝ちなさい」ここでの善は、《イエス・キリストにおいてご自身を現わされた神》このお方によって、ということは明らかです。この方によってのみ、悪に負けずに生き抜く望みが与えられています。だからこそ主イエスは「われらを悪より救い出し給え」と祈るよう教えてくださっているのです。